駒澤大学ギタークラブ資料館

KGC Laboratory

エッセイ

魅せる演奏~吹奏楽部に学ぶ 3年生 鈴木 ひさの

今回の春合宿では、自分の課題が沢山見つかった。
その中でも、特に、自分の演奏会に対する意識、
演奏する~という行為そのモノについて、考えさせられました。

スプリングコンサートのプロで、雰囲気が良くない、
特に、新3年生が仏長面で楽しくなさそうに弾いている~という指摘が、
先生から、また、部員達からも出ていました。

私も恐らく、その指摘どおりの演奏をしていたと思う。

けれど、私はギターを弾いていて楽しかった。
それなのに、なぜ仏長面になってしまうのか・・・・。
指摘を受け、なるべく笑顔でいられるよう、顔の表情を意識してみたものの、
根本的に「見られている~」という意識が足りないのだろうと、
何となく、頭では分かっていたつもりでした。

けれど、そういう意識はあっても、本質的な問題は改善されないまま、
合宿から帰り、「なぜだろう?」と考え続けていました。

合宿から戻ると、その週に、
吹奏楽部のスプリングコンサートが大学で行われることを知り、
一度、自分が観客の立場で学生主催の演奏会というものを見てみれば、
何かが掴めるかもしれないと思い、足を運んでみました。

私は今まで、駒大の吹奏楽部の演奏会を、一度聴いてみたいと思いながらも、
実際に行った事は無かったのですが、
今回初めて吹奏楽部の演奏会に行って、この目で見て感じたことは、
彼らは、自分たちがエンタテイナーだという事を自覚し、
プロ意識を持って、観客を楽しませることを一番に考えている集団だ・・・ということでした。

演奏会は、二部構成になっていて、
前半の第一部では、流行のポップスや明るい曲等を、
冗談まじりのMCを交えつつ、コミカルに演奏していたのですが、

後半の第二部では、ガラリと雰囲気を変え、揃いの制服に身を包んで、
一糸乱れぬマーチングを披露してくれました。

第一部では冗談を飛ばしたり、わざとおどけて演奏したりしていたメンバー達が、
第二部に入ると、同一人物であるとは思えないほど、真剣で張り詰めた、
それでいて観客をひきつける演奏をしている・・・。
そんな彼らを見て、私は彼らの演奏会に対するプロ意識を強く実感しました。

勿論、私は、吹奏楽部のステージを真似したいと思っているわけではありませんし、
実際、ギターの場合、立って演奏することが不可能なので、
安易に真似するわけにもいかない事は、分かりきっているのですが、

それより何より、彼らのステージを見ていて思ったのは、
私自身、自分で何となく考えていた以上に、「見られている」という意識、
ステージで演奏する者としてのプロ意識が足りなかった事を痛感したと同時に、
そんな自分自身が、とても恥ずかしく感じたのでした。。。

そう、私がステージでギターを弾いていて感じていた「楽しさ」というものは、
私の心の中にある楽しさであって、それを見ている人には何の関係もないのだと。
見ている人を楽しませるには、全く別の要素が必要なのだという事に、
吹奏楽部の演奏を見て、改めて気付かされたのでした。

私が意識していた、お客さんの目というモノは、
「音ミスをしないように・・・」とか、
「失敗をしないように」という種類のもので、
そんなマイナス面ばかりの意識を持ったところで、
音楽の楽しさなど伝わらないのだと。

分かってみれば当たり前のことなんですが。

当然、音ミスや失敗は、あってはならない事ではあるのですが、
「見られている」ということを、マイナスの面で解釈するのではなく、
ステージパフォーマンスとして考え、
「見られている」から、「見せる」へ、そして「見せる演奏」から、
「魅せる演奏」というものを追い求めていくべきではないかと、そう思えてきました。

これから入ってくる新入生は、ギタークラブや、
ギターという楽器のことすら知らずにステージを見る~という点で、
部活の一年間を通した演奏会の中でも、一番シビアなお客さんだと思います。

これから始まる、ギタークラブのスプリングコンサートでは、
こうしたことを自覚しながら、
一回一回のコンサートに、全力で臨みたいと思います。

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