駒澤大学ギタークラブ資料館

KGC Laboratory

エッセイ

我がレンタ人生~その熱き青春の日々 斉藤 拓也

私は合宿や演奏会時にレンタカーによる楽器運搬の仕事、
通称、「レンタ組」なる仕事を4年間経験した。

「えっ、何すかそれ?」と言うそこの君・・・。
以下をよく読んで欲しい。

そもそも、もし、楽器運搬係なる仕事が無かったらどうなるだろうか・・・。
当然、演奏会や合宿で必要な物は、部員全員で目的地まで運ぶことになるであろう。

プライムギター、各種ギター、コントラバス、足台、譜面台、その他の備品を一度に。
普段の練習でもこれらを一度に運びきることはできないので、
大学と目的地を何往復もすることになり、交通費もかさむ・・・。
つまり、面倒くさいこと、この上ないのだ。

言わば、部員の時間と手間と費用を一手に引き受ける仕事がレンタ組である。
当たり前だが、この場合、メリットを得るのは一般部員だけであり、
レンタ組にはメリットが無い。

しかもデメリットを受けるのもレンタ組だけである。
では具体的にデメリットとは何か。経験者として言わせて頂こう。

他の部員と比べ、個人に課される責任が極めて重く、
精神的&肉体的負担が大きいのである。

私達は免許を持っているとはいえ、日常的に運転しているわけではない。
しかも、車のサイズがやたらデカイのと、
荷物を積むことでアクセルやブレーキのタイミングが掴みにくく、
余計に運転に慣れるまでにしばらく時間がかかる。
ましてや、東京の道路には不慣れであり、よく迷ったりもする。

そんな中、もし万が一、大きな事故を起こしてしまったらどうなるか。
当然、運転手本人はもちろんギターも備品も無事では済まないし、
もはや、演奏会や合宿どころではない。

部の存続に関るだろう。

成功して当たり前、絶対失敗は許されない。
そこまで部の運命が個人に委ねられる仕事なのだ。

生まれつき心配性の私など、いつも最悪の事態を考えてしまい、
演奏会や合宿前日の夜は、なかなか眠れなかった。
演奏会場に到着したら「もう演奏会は終わったよ~」などという夢を見たことがあるくらいだ。

冗談抜きで。

そして、何事も無く無事仕事が終わった時には、
心の底から、ホッと安心したものだ。

そんな思いをしてまで何故やるのか、
そういったデメリットを除けば、レンタが一番有効な手段であるからだ。
これについては、私も強くそう思う。

最後に、4年間の経験に基づいて、私の意見を言わせてもらおう。
レンタに乗ったことの無い人は、私がこれを書いたことにより、
少しでもデメリットのことを思って欲しい。

決して傲慢な気持ちで言っているわけではないが、
この仕事がサービスの領域に近いものだということも。

これからレンタに乗る人は、責任が重く、
部の運命が委ねられる重要な任務だということを、肝に銘じて欲しい。

~かといって、デメリットだけの報われない仕事だと思うのも止めて欲しい。
君達がいなければ合宿や演奏会は成り立たないのだから。
そして、他の人には出来ない仕事をやっているんだという、誇りを持って取り組んで欲しい。

レンタに限ったことではないが、
私は、こうしたあまり日の当たらない縁の下の力持ち的な仕事を、
どれだけ一生懸命、やりがいを持ってできるか・・・・。

そうゆうところに、人間の真価が問われるのだと思う。

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